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楠木建「好きなようにしてください」は人生に悩んだ時に読みたい一冊

一橋大学の楠木建さんの「好きなようにしてください」感想・書評です。

Newspicksでの連載が元になっている本書。

読者からの多種多様な質問に「好きなようにしてください」というスタンスで楠木さんが答えるさまが痛快です。

就職活動、転職活動、キャリアプランなどの「仕事」の話はもちろん、夫婦関係や教育、部下と上司の関係など、誰もが一度は思うような幅広い質問があります。

「人生相談系」の話が好きな人はぜひ読んでみてください。

深い洞察と、知的なユーモア、何より賢者のような悟った態度から繰り出される「好きなようにしてください」という言葉が胸に突き刺さるはず。

楠木建とは?

楠木建さんは経営学者です。

一橋大学大学院経営管理研究科教授で、専攻は競争戦略。

「ストーリーとしての競争戦略」で有名です。

 

楠木建の基本的な信念「人間、99%は好きなようにやれ」

どんな回答にも「好きなようにしてください」と答える楠木さん。

彼の基本的な信念「人間、99%は好きなようにやれ」だそうです。

  • 自分の意志(自由意志)で自分の人生を歩むべき
  • 「○○せざるをえない」と勝手に思い込んではいけない
  • 一定の義務を果たしさえすれば、自分の自由意志で生きることが出来る

 

楠木建のキャリアに対する基本姿勢

楠木建さんのキャリアに対する基本姿勢の元になっているのは以下の2曲です。

  • 時の流れに身をまかせ(テレサ・テン)
  • 川の流れのように(美空ひばり)

平たく言うと、

「ま、できるだけ自分が好きなことをしながら、自分のペースで毎日楽しく仕事を続けていければいいとおもっているんですけど…。えー、平和と健康だけは大事にしてください。ドーモスイマセン」

です。

 

ライフネット生命会長の出口さんも同様のことを言っていて、意気投合したのだとか。

「これを絶対に達成しようという目標をあらかじめ明確に決めて、ひたすらそれに向かって邁進する。私に言わせれば、そんなことしても仕方がない。世の中、ほとんどのことは自分の思い通りにならない。だから、自然な流れにひたすら身を任せて行きていく。これが自分の生き方だ」

 

目標、夢、努力、達成…みたいな「熱いワード」がない生き方ですね。

余談ですが、スタジオジブリプロデューサーの鈴木敏夫さんも同じようなことを言っています。

人間の生き方っていうのは2つ。目標を決めてそれに到達すべく努力するという考え方。一方で、目標を定めないで、目の前のことをコツコツやる。それによって開ける未来もある。

この考え方に共感できる人は、鈴木さんに師事したプロデューサーの本が面白いのでぜひ読んでみてください。

 

好きなようにしてくださいの質問例

好きなようにしてくださいの質問で、個人的に面白かったやつをまとめました。

 

財閥系からベンチャーへの転職に妻が大反対している

「財閥系からベンチャーへの転職に妻が大反対している」という話。

30代男性は、財閥系起業に勤務しますが、ITのスタートアップからオファーをもらい、行きたい気持ちがあるのだと。

「反対する妻、安定、社会的なステータスを加味すると、今の企業に残ったほうがいい気がするがどう思いますか?」という質問を楠木さんに投げかけます。

 

回答の結論は一言「好きなようにしてください」です。

そして続く意見がとにかく面白い。

純粋に仕事として考えた場合、あなたの二つの選択肢はほとんどトレードオフになっていません。

社会的なステータスというのは、あくまでも他人がどう思っているかという話。毎日「丸の内の財閥系に務めているオレ、どうよ?」と聞いて回っているわけじゃあるまいし、そんなことよりも当人の満足のほうが何倍も大事です。

ここまでスパッと切りますかね、という切れ味の良さ。

 

ANAとスカイマークどちらに行こうか迷っている

類似の質問で、ANAとスカイマークどちらに行こうか迷っているというものもありました。

当然、ANAとの方が現時点では安定も年収も上のように思えます。

著者は面白い観点で助言をします。

状況の良し悪し(安定や年収)は現時点で比較可能です。貴方に限らず、さあどっちにするかという意思決定を迫られたときは、どうしてもそちらに目が行く。それが人間の性です。ただし、こういうときこそ「位置エネルギー」と「運動エネルギー」を分けて考えることが大切です。

比喩的な表現になりますが、その状況自体が持っているメリット、これが位置エネルギーです。

たとえば、「周囲の人がどう思うのか」。これは位置エネルギーの最たるものです。「ANAに転職したよ」というと、ご両親やご親戚は「それなら安心、よかったね」と言うかもしれません。

ところが、御本人がおっしゃっている通り、どこで働こうと自分がそこで何のために何をするかという運動エネルギー、ここに仕事の内実があります。

位置エネルギー満載で、一方の運動エネルギーがすっからかんになっている人がいるものです。イメージで言えば、たとえば役所の偉い人。何も実質的な仕事はしていないのに、みんなが頭を下げる。とにかく位置エネルギーが高く、自他ともにそこにこだわりまくる。

現在の「位置エネルギー」(肩書、年収)をとるか、「運動エネルギー」をとるか?

 

子供を良い大学に入れたいんですが

「良い大学に入れたい」という親の質問に関しても、楠木さんはバッサリと切ります。

入るのが難しいということはその大学の何らかの質を確かに反映しているわけで、「良い大学」なり「良い教育」を判断する一つの基準ではあります。しかし、他にも山程重要な基準があるのもまた事実。ところが、いざ自分の子供の教育となると、他のすべてが吹き飛んで、よさの基準が「難易度」に修練してしまう。

また、親に対して「なぜ」を深掘りしていくと、たいていこんな話になるのだとか。

 

なぜ良い大学に入れたい?

→「良い仕事、就職に有利(大蔵省や三菱銀行、三井物産など)」だから

 

なぜ良い就職先だと思う?

→「簡単にはつけない人気のしごと、社会から評価される、給料が高い」から

 

で、話を突き詰めていくと「要するに、子供に幸せになってもらいたい」という結論にたどり着く。

 

そんな結論とやり取りに対する、痛快なコメントが面白い。

最後の結論は完全に正しい。ただし、そこに至るまでの過程が全部間違っていると思います。良い大学の向こうに良い仕事があり、その向こうに良い給料があり、その向こうに「豊かな生活」や世の中の人からの「いいなあ」という羨望があり、その先に幸せがある

要するに物事を考える順番が間違っている。

「自分にとっての幸せとは何か」ということを何よりも先に考える。これがまっとうな順番です。

ポイントは、仮に「自分にとっての幸せとは何か」を起点に考えたとしても、そんなの高校一年生でわかるわけがない、ということです。そんな答えがちょっと考えたぐらいではすぐには出ないことを子ども自身が知る。ここに最大の意義がある。

 

役に立った考え方や思考法

役に立った考え方や思考法をまとめます。

 

お詫びスキルがひたすら向上する客室乗務員問題

「お詫びスキルがひたすら向上する客室乗務員問題」が面白かった。

  • 客室乗務員が食事の注文に来る
  • カレーライスを頼むが、品切れ
  • 大変申し訳なさそうに謝る

という自体に直面した楠木さん。

しかし後日、同じ展開に再度遭遇したそうです。

 

客室乗務員は、この問題に対して、何度も同じ対応をすることで「お詫びスキル」だけが上達したのです。

 

しかし、自分の担当の範囲外に目を向けると、

  • カレーの発注量を増やす提案をする
  • エコノミーなら機内食2種類もそもそも不要ではと提案する

などの対応が出来るはず。

こうすれば、顧客満足度の上昇や、仕入れコスト低減、オペレーション簡易化など、会社にとっても顧客にとっても利益があるはずだと。

 

この考え自体も面白いですが、何よりも著者自身の「日常に対する観察」の細かさに驚かされますね。参考になる。

 

ビジネスで一番大事なのは「人間に対する洞察」

ビジネスで一番大事なのは「人間に対する洞察」。

結局はBtoBでもBtoCでも人間が人間に対してやっていることです。

本書では、劇作家・小説家の「サマセット・モーム」の人間に関する洞察が参考になると言います。

私のしてきたのは、ただ多くの作家が目を徒罪しているような人間の性質のいくつかを、際立たせただけのことである。

人間を観察して私が最も感銘を受けたのは、首尾一貫性の欠如していることである。

首尾一貫している人など私は一度も見たことがない。

同じ人間の中にとうてい相容れないような諸性質が共存していて、それにもかかわらず、それらがもっともらしい調和を生み出している事実に、私はいつも驚いてきた

 

自分の仕事を自分の言葉で定義する

あらゆるビジネスパーソンは自分の適性なり仕事の土俵を自分にとって最もしっくりくる言葉で定義し直すべき、と著者は述べます。

  • そもそも自分は何に向いているのか
  • 何が好きで、何が得意なのか

これを、社会的な言葉や定義とは別に、自分の「オリジナルな言葉」で定義することが肝要です。

 

楠木さんの場合、世間一般のカテゴリとしては、

  • 教授職
  • 経営学者
  • 経営学の中でも「競争戦略論」が専門

となります。

しかし、オリジナルの定義として「自分は芸者である」という自己定義をしているそうです。

メタファーを使った定義とs知恵、自分の仕事を芸者だと思いこんで、その思い込みの線で30代から仕事をしているそうです。

 

ではなぜオリジナルの定義が必要なのか?

  • 仕事の自己定義は自分の芸風の形成の基盤になる
  • 芸風がキャリアの最大の拠り所になる

というのが答え。

元リクルートの藤原和博さん風に言えば、100万人に1人の人材になるということですね

そのための方法としての「仕事の自己定義」です。

 

文章を書く時に大事なのは「何を書くか」

文章を書く時に大事なのは「何を書くか」だそうです。

「自分が面白くて、重要だと思うこと」だけを書くべきだ、と。

 

どう書くか(文章構成、抑揚、リズム)などのテクニックは二の次。

逆に言うと、自分が面白いことを書いていれば、自然と文章にリズムが出てきて、うまい文章構成になるのだとか。

自分がオモシロイと思ったものを周囲の人に伝えて、「ほんとだ、面白いね」と言ってもらえると嬉しい。これは人間の本性です。自分が見て面白かった映画であれば、誰かに「これ面白いぜ、見なよ」とすすめたくなりますね。僕だったら、もう一回一緒に観てもいいぐらいです。自分が面白かったところで相手も面白がってくれると、「ね?ここ最高でしょ?」と嬉しくなります。

「話すように書く」ことで、自分が面白くて人に伝えたちとおもったこと(だけ)を書くという、文章にとって最も大切なことに意識を集中できた

 

そして最後に、文章力の正体とは「どうしてもわかってもらいたいことを作り出す力」だと言います。

いやはや、慧眼です。

 

 

以上、楠木建「好きなようにしてください」の感想でした。

人生、仕事に悩んでいる人、ぜひ読んでみてください。

切れ味の良い回答がたくさん詰まっていますので。

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