高学歴で大企業勤務しているけど、やりたいことが出来ないで悩む方が是非読むべき本があります。
石井てる美さんの「キャリアを手放す勇気」です。
※「私がマッキンゼーを辞めた理由―自分の人生を切り拓く決断力」の文庫版です
こんな方にオススメ
- やりたいことがあるけど今の安定の暮らしを捨てられない人
- リスクを取るのが怖い人
- 決断をとにかく先送りにしてきた人
…ちなみに私は上記全てに当てはまります。
そのため、この本の実体験と言葉にかなりグッと来ました。
まるで自分ごとのように読めて、辛かったですが、読めて良かったです。
目次
「キャリアを手放す勇気」の著者「石井てる美」とは
石井てる美さんは、東京大学卒業後、経営コンサルティング企業「マッキンゼー・アンド・カンパニー」の日本支社で働く…という輝かしいキャリアから、お笑い芸人に転身した方です。
※ちなみに当たり前のようにTOEIC満点です。すごい。
お笑い芸人転身後、下積み期間を経て、アメリカの大統領選挙のときに「ヒラリー・クリントンのモノマネ芸」でブレイクしました。
キャリアを手放す勇気の概要
書籍「キャリアを手放す勇気」の内容をザックリ3行でまとめるとこんな感じ
- 世界最高のコンサルティング会社マッキンゼーでの仕事生活
- マッキンゼーでの辛い経験と仕事を辞めるか迷う日々
- 退職しお笑い芸人になることを決めた理由
読者が最初に思い浮かぶ質問は一つ
「何故そんな良いキャリアを捨てて、不安定なお笑い芸人の道へ?」
だと思います。
なぜそんな決断をしたのか?
否、「できたのか」という話が書かれています。
マッキンゼーのマインドセットのおかげで決断できた
マッキンゼーを辞めてお笑い芸人になるという、「勇気のいる決断」が出来たのは、マッキンゼーで学んだマインドセットのおかげでした。
…と書くと、ビジネス書っぽくて格好良いんですけどね。下記のように書かれています。
私の決断の最後の一押しをしてくれたのは他でもない、「即断・即決・即行動」というマッキンゼーで培われたマインドセットでした。
ただ、本を読み進めると分かるのですが、泥臭くて、生々しい、1人の人間の心の葛藤がありました。
完全にうつ病寸前の仕事の状況
輝かしいキャリアでマッキンゼー入りした石井さん。
彼女を待ち受けていたのは、過酷な労働環境とメンタルの負荷でした。
その姿は完全にうつ病寸前です。
わからないことだらけの毎日。わからなくても訊ける相手もいない。もはやどこがわからないからさえもわからない状態になっていき、完全に負のスパイラルに突入してしまいました。
仕事をする上で何よりストレスを左右するのは、労働時間でも、仕事内容でもなく、誰と働くかだと痛感しました。
ランチも夕飯も取らない。そんな時間があるなら、少しでもプロジェクトの内容を頭に入れようと、昼の時間もずっと資料を見つめていました。こうして精神的に相当追い詰められてボロボロになっていきました。
元々エリートしかいないマッキンゼー。
当然周囲は頭がよい人、仕事ができる人しかいません。
さらに、新入社員にすらプロジェクトアサイン初日から「バリューを出せ(=結果を出せ)」という高い期待をかけられる企業文化です。
毎朝、駅で一本のソイジョイを買って食べていました。極度に緊張しているため、日中は飲み物以外のどを通りません。結局、1日のうちで口にするのは朝のソイジョイと飲み物だけという日が続きました。
これはあかん…
やっとの思いで平日を終えて週末を迎えても、日曜の午後になると呼吸が乱れ始めました。今から思えばこれが過呼吸と呼ばれるものなんでしょう。月曜以降のことが心配で、どこかにでかけても全く楽しむことができません。完全に「病んで」いました。
このような状況になっても本人はなかなか自覚できないものです。
うつ病かもと思った方、仕事に病んでいる気がする方は、絶対勘違い(&自分のせい)じゃないですから無理しないでくださいね
ちょっとだけの何かの拍子次第では、私は今この世にいなかったと思います。
今心身を病んでいる人は、速やかにその場から逃げてください。ただし少し勇気を出して、”自分から”逃げてください。自分の心身が悲鳴を上げていることは、どんなに近しいと思っている人にも意外に伝わっていません。職場の人はもちろん、家族や友人、恋人も含めてです。これは私の体験による実感です。
車に轢かれてしまったほうが楽になれるとか、事故にあったほうが楽になれる…みたいな思考になっている時は、石井さんの言葉の通り「逃げてください」ね。
そして、石井さんはある日気づきました。
「私がやりたいことはお笑い芸人だった」と
仕事を続けるか、お笑い芸人になるか悩んだ末、マッキンゼーで学んだ思考方法を活かしある基準を自分に設けます。
仕事を続ける3つの条件
仕事を続ける3つの条件です。
シンプルですが、だからこそ役に立つ指針だと思います。
- 好きかどうか
- 人より得意か
- その先に目標があるか
石井さんの場合
- コンサルの仕事はそこまで好きではない
- 人生を捧げる働き方をする同僚のように、情熱を傾けられない(能力を磨けない)
- このキャリアの先に自分がなりたい姿はない
という風に判断をして、辞めることを決心します。
仕事を辞めようか迷っている方にはたいへん役立つと思います。
今この瞬間、1分だけでいいので「自問」してみてはどうでしょう
辞めると決断はしたものの、手強いラスボスがいた
辞める方向で考えたものの、心は揺らぎます。
しかし「本当に大切なもの」「人生で絶対に失いたくないもの」を考えることで乗り越えられたと石井さんは語ります。
人生で絶対に失いたくないもの、私にとってそれは家族と友達だったので、ならば「もう何も失うものはない」という境地に至りました。自分の本当に大事なものと比べたら、「学歴、エリート人生、きれいな履歴書、安定、安泰、収入、プライド、地位、名誉、世間体、体裁、”すごい”とおもわれたい、他人からどう見られるか…」、今まであれほど自分を縛り付けていたはずのもの全てが、心からどうでもよくなりました。
高学歴で、大企業に努めて、多くを持っているほどの悩みですよね。
(人から言わせれば贅沢かもしれませんが、持つものの悩みというのは確実にありますよね)
レールから降りるのはそれなりに、とてもとても大変なことだと実感しました。
「これでいいんだ」と自分に言い聞かせるのは、たいてい夜寝る前でした。でも、朝が来てまたいつものように会社に行くと、オフィスの景色という妙にリアルな「現実世界」がどどーんと待ち受けていて、私の衝動をいとも簡単に消し去ろうとするのです。
この現実という最大難関、いわばラスボスは本当に手強くて、決断したはずの私の気持ちに何度も何度も揺さぶりをかけてきました。
なんて生々しい描写。
私も退職届を出す前はこんなことを考えていました。
一人になると決意は固くなります。
しかし、朝が来ていつもの日常が始まると、自分の考え・心を再度疑ってしまいます。
本当にこの環境を捨てて良いのか?
この安定を捨てて良いのか?
後悔はしないのか?
ラスボスは自分自身の心なのです。
【まとめ】「キャリアを手放す勇気」を読んで心の声に従う
どんな人も人生のリスクをとって「やりたいこと」という心の声に従うことは難しいです。
石井さんは見事それをやりとげました。
それが最良の選択かは、分かりません。
しかし少なくとも、「後悔はしていない人生」を送れているようです。
仕事を辞めようか迷っている方、是非読んでみてください。
ちなみに「スキを仕事にしないと生きられない残酷な時代」の話は、以下の2冊の本を読むとより理解が深まるので合わせてオススメ。