「ブラック・ミラー」から抜け出せない。
Netflixオリジナルドラマ「ブラック・ミラー(Black Mirror)」を知っていますか?
- 1話完結のドラマ(40分~1時間くらい)
- SFベースでブラックジョーク&社会風刺たっぷり
- 脚本がエミー賞を受賞 ※TV版のアカデミー賞みたいなやつ
という感じでして、見始めたら終わらないです。
簡単に言うと「イギリス版、世にも奇妙な物語(スパイス強め)」。
パカログ
シーズン1から見る必要はありません。
※オムニバス形式なので、興味あるやつから見ていってOK
当記事では、ブラック・ミラーの各エピソードの感想を「何を伝えたかったのか」に着目して、書いていきますね。
目次
「ブラック・ミラー」シーズン1のエピソードまとめ
「ブラック・ミラー」シーズン1の作品名は以下のとおり
- 国家
- 1500万メリット
- 人生の軌跡のすべて
星新一を彷彿とさせる、意味が有りげなタイトルばかり。
先に言っておきますと、どれも見終わった後に「良い気持ち」にはなりません。
後味悪さしかない。それが妙に癖になる。そういうドラマです。
製作者チャーリー・ブルッカいわく
「私たちが生きる10分後の世界になるかもしれない」
という考えのもとに作成したそうな。
有りえる未来への警鐘と捉えることも出来ます。
「それぞれの作品が語ろうとしたことはなにか?」という観点から、感想を書いていきます。
パカログ
「ブラック・ミラー」シーズン1『国家』の感想(ややネタバレ)
「ブラック・ミラー」シーズン1『国歌 The National Anthem 』のあらすじ
- 深夜、イギリスの首相マイケルは突然の呼び出しを受ける
- スザンナ妃が何者かに誘拐されたらしい
- 開放する条件は「首相がTVの前で、豚と性行為する姿を生放送」すること
- 果たして彼はその行為を選ぶのか、あるいは、犯人を捕まえられるのか?
というお話。
シーズン1の「1話目」からこんなエピソードですからね。
パカログ
お金目的の誘拐犯、国家転覆を目論むテロリストの要求なら分かります。
しかし犯人の望みは「首相が豚と性行為」すること。
いきなりのブラックジョーク。
一見、何言ってんだと笑える話です。
しかしながら、物語を見続けると、
- 首相の思惑とは別に独自に動く人々
- 自己の利益のために、勝手な行動をする人
- 自分の欲望のために、情報を売る人
- 首相の葛藤
が迫ってきて、ブラックコメディな題材を忘れ、シリアスな人間ドラマに夢中に。
国歌のネタバレ結末
結末をネタバレすると
首相は結局、犯人を見つけられない。
豚と性行為して、その姿が世界に流れる。
しかし、支持率はその行動によってむしろ向上する(妻との関係は冷めきる)
王妃は無事、保護される。
しかし、首相が豚と行為をする前から、実は開放されていて、首相の行動に意味はなかった(この事実はもみ消された)。
結局犯人は芸術家であり「世界中の人々がTVに釘付けの状況になる」という作品を作りたかった。
という感じ。
なかなかに悲惨で「それじゃあ結局、彼の最後の行動の意味は何だったのか?」とつい思ってしまいます。
犯人にも首相もどちらも不憫でして、救いのない話だなあ、と。
英雄談すらも、結局は虚構なのかもしれない。
作られただけかも知れない。
そんなふうに、物語を見る側を一歩大人にしてくれます。
「国家」の感想
論理・倫理・人の気持ち。
それらを顧みず、各々動く人間の怖さが描かれています。
政府は犯人の要求を隠そうとします。
しかし、マスコミ各社は、他社に追い抜かれないようにと情報を拡散させます。
「犯人を刺激するかも知れないし、やめておくべき」という良心的な意見は、もみ消される。
メディアの強欲により、報道は加熱していきます。
一度でも拡散された情報は消せなくて、YoutubeやTwitterを通じて世界中に流れていきます。
「首相と豚の性行為」という面白すぎるネタに飛びつく人々の怖さ、倫理観の欠如。
コレって現代でもすでにある「ネットの恐怖」ですよね。
パカログ
首相周りは真面目に対応しているのに、外野は自分たちの思うがままに、時にはふざけて行動している点がなんとも不憫。
あくまでこれ(首相が豚と性行為するのか?)は、大衆にとっては、一つの消費されるネタでしかない。
チャップリンは「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」と言いました。
首相たちにとっては悲劇でも、大衆からすれば喜劇でしかない、とも言えるかもしれません。
パカログ
本作は
- 大衆の圧力の恐怖
- エゴによる行動の悲惨さ
- 世論の不確かさ
- 公という立場に殺された個人
など色々なものを描いています。
しかしなんと言っても「ショーにされ、消費される、個人の人生」というのが非常に痛々しい。
そしてそれは、現実世界でも既にTVのワイドショーや芸能誌のゴシップによって引き起こされますからね。
「10分先の未来」で充分ありえる。そんなお話でした。
※この話が好きな人は「映画トゥルーマン・ショー」も気にいると思います。
トゥルーマン・ショーの感想・評価・ネタバレ考察 | 個人的に大好きな映画です
「ブラック・ミラー」シーズン1『1500万メリット』の感想
「ブラック・ミラー」シーズン1『1500万メリット』のあらすじ
- 生活をすべてシステムに管理されている世界が舞台
- 人々は同じ建物の中で一日中過ごし、毎日「エアロバイク」のようなものを漕ぐ
- ある日主人公は、一人の女性に恋をする
- 彼女のために自分が貯めたお金を使い、彼女を一発逆転の「オーディション」に送り込む
- 彼女の歌声は絶賛されて、労働から抜け出せそうになる。しかし…
というお話。
パカログ
ややネタバレありで1500万メリットの内容
舞台設定自体に大きなオチは無いので、ややネタバレありで(想像)すると、
おそらく何かが起こった近未来の話です。
人々は幽閉されて、自転車を乗り継ぐことで、電力を蓄えます。
食べるものも偽物で、部屋の中は誰かが作った娯楽映像に囲まれています(CMもあります)。
この世界では、現生の通貨がなくなり、代わりに電子通貨が使われています。
通貨名を「メリット」といい、人々は毎日仕事をすることで「~~メリット」貯めている状況です。
※後半分かりますが、自転車に乗ることが仕事。これにより「メリット」が貯まります
主人公は、寡黙な男で、メリットをたくさん貯めて日々を過ごしています。
そして彼の前に現れた女性に恋をして…
彼女に恋をしてメリットを使い果たして、彼女を「人生一発逆転のオーディション」に送り込みます。
そのオーディションで彼女は番組の意思、そして大衆の圧力により、アダルトな番組に出るようになる。
主人公が恋した彼女は、アダルト女優になってしまった。
心痛めた彼は、改めてメリットを貯めて、自分が舞台に立つ。
そして「この世界の虚構、酷さ」を大衆に向かって叫ぶ。
彼の叫びは虚しく、「彼の心からの叫び」をエンタメ番組にする提案がされる。
彼は、その提案受け入れて、自転車を漕ぐ毎日から抜け出し、幸せな暮らしを送る。
1500万メリットの分かりづらいところの解説(ドリンク、レモン)
まず、ヒロインの女性が舞台に出る前に飲んだドリンク。
あれは「正常な判断をできなくする」ドリンクです。
※自白剤とか、ドラッグとか、そういうものに近い
それゆえ、主人公が次の舞台に出るときに「ドリンクを既に飲んだ」と言っていたんですね。
パカログ
次に、あの世界は基本的には電力が足りていないでうす。
それ故に、わざわざ人の労働力を使って、電力を生成していた。
しっかりと電力を作らない=労働しないものはバツとして、見せしめのように、レモンと呼ばれる奴隷のような役割になる。
英語のスラングだとレモンは「欠陥品」的な意味もあるのも象徴的ですね。
なお、お金がない(メリットがない)なら、痩せて餓死しないの?と思うかも知れませんが、現代は貧困=肥満です。
※アメリカでは貧困層のほうがジャンクフードなどの食品を食べて肥満な人が多いです。
低いメリットの人(しっかりと電力を作らない人)が肥満なのは、自然です。
健康的な(自然な)食べ物は、高いメリットが必要。
怠ける人はメリットが少ないので、ジャンクなものを食べるしかなく、太る一方ということ。
1500万メリットのSF的描写は割と微妙(感想)
「1500万メリット」のSF的描写は、ぶっちゃけ微妙です。
ディストピア的な世界で、人々はシステムの奴隷となり、労働しているというのは、よくある演出です。
太った人をバカにして人々の心を満たす(スケープ・ゴート)、
日常にCMが流れる、
歯磨き粉にすら数円のお金が発生する
…みたいな描写は、まあ面白いけど
パカログ
唯一、面白いなと思ったのが「CMの処理」ですね。
今我々がYoutubeやTVを見ていても、CMは流れます。
この物語の世界でも同様にCMが流れるのですが、それを拒否することができないようになっている点。
「人間が目を開き、CMを見ているか」をカメラを通じて確認しているんです。
つまり、人が目を閉じたり、視界を隠したりすると、CMが止まり「CMを見てください」と警告が流れる。
我々は今、CMを「(物理的に)見ない」自由がありますが、将来的にそれもなくなるかもしれません。
※現在のYoutube Premiumなどのように、課金して広告をスキップする機能は、物語の中でもありましたw
【無料体験後に解約した】YouTube Premium(プレミアム)のメリット・デメリットを語る
1500万メリット考察。ジョージ・オーウェルの「1984年」の亜種
1500万メリットの考察です。
ジョージ・オーウェルの「1984年」の亜種だよなあ、という感じ。
大きな体制に反抗していた男は、愛する人と引き裂かれて、体制側に寝返る…という話。
パカログ
名作なので興味ある方は漫画版どうぞ↓
で、ブラック・ミラーの方は「エンタメ」に振り切っています。
人間っていうのは、結局どんなに強い意志を持っていても、ダメだ。
どんなに強い意志を持った人間も「信念よりも、自己の利益を最後には優先する生き物だよ」。
…と描写されています。
なんていうか、諦念を感じさせるものなんですよね。
結局「人というのは、欲望に、より良いものに流されてしまうんだ」というのを描いて終わり。
これはこれで、一つの面白い作品なのですが、心には残らない。
パカログ
「1500万メリット」の先にあるのは岸辺露伴の「だが断る」の精神
「1500万メリット」で描いていたのは「人間はこうなってしまう」という諦め。
しかし、個人的に見て楽しいエンタメは
「しかしながら、人間はそんな状況を乗り越えて、戦うべきだ」
という物語です。
ジョジョの奇妙な冒険の岸辺露伴は、相手の魅力的な提案に対して
「だが断る」
と意思を示しました。
つまり、自己保身、自分の利益を捨ててでも、手に入れるべき理想がある。
若く、甘い考えですが、そうするのが人間的な生き方であり、人間讃歌的な生き方なんじゃないかな、と思います。
ジョジョを貫くテーマ「人間讃歌」とは何か?意味は?【各部のボスとの対比で考える】
ブラック・ミラー全般に言えますが、面白い設定だしストーリーも凝っているけど何度も見たいと思えない。
それは、その主張の部分が無いからかな…と。
「ブラック・ミラー」シーズン1『人生の軌跡のすべて』の感想
時間がなくなったので、またそのうち書きます\(^o^)/