エミー賞も受賞した傑作TVドラマ「ブレイキング・バッド」のスピンオフ作品が「ベター・コール・ソウル」です。
ブレイキング・バッドが面白いのはマグレじゃないと分かる、非常に優れた作品でした。
いわゆる前日談(時系列的に前)なので、「ブレイキング・バッド」を見る前に見ても楽しめます。
パカログ
目次
ベター・コール・ソウルとは?未完結の連続ドラマ
ベター・コール・ソウルとは「ブレイキング・バッド」の前日談スピンオフ作品です。
悪徳弁護士である”ソウル”がいかにして生まれたのか?
ソウルが生まれる前の「ジミーマッギル」の冴えない弁護士生活と、その人生から分かるようになっています。
ベター・コール・ソウルのあらすじ
アルバカーキで弁護士をしているジミーマッギルの物語。
彼の状況は
- 古びた自動車に乗り
- 駐車料金の3ドルをケチり
- 人も呼べない事務所に住んで
- 電話で自ら秘書のふりをして人数を増やしてみせる
みたいな感じで、散々です。
時間をかけて悪人を弁護しても、予定の3分の1の「700ドル」の報酬しか得られない。
そこへ大口顧客の候補(ケトルマン夫妻)が現れます。
彼らに自分を雇わせるために、彼は一つの仕掛けをして…
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ベター・コール・ソウルはシーズン1の第1話目からして最高の引き
で、シーズン1の第1話目のからして最高の引きです。
※ややネタバレで語ります
お金に困った主人公のジミーは、偶然知り合った「当り屋」の兄弟に「お金持ちにぶつかってくれ」と依頼をします。
その弁護料金(仲介料金)で儲けようという算段ですね。
無事(?)車に引かれた当り屋兄弟を助けるために、犯人(車の持ち主)の家に乗り込むジミー。
そこに待っていたのは銃を持った男。
ジミーは問答無用で、家に引きずり込まれる。
さて彼はどうなる?
…というのが第1話目のオチです。
ブレイキング・バッドのように、悪の世界に一気に引きずり込まれる感じではないですが、弁護士でありながらも徐々にそちら側に行く彼の姿が面白いです
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そもそもソウル(ジミー)ってどんなキャラクターか?
そもそもブレイキング・バッドでは、ソウル(ジミー)はどんなキャラクターだったか?
- シーズン2 第8話「ソウルに電話しよう!(Better Call Saul)」で初登場
- ド派手な広告で宣伝し、複数台の携帯電話を持ち、裏の稼業を営む弁護士
- 主人公のウォルターにやられまくり
という感じ。
一応、弁護士なんだけど、資金をキレイにしたり、裏のコネクションを持っていたりと底しれぬ「闇」を感じさせるキャラクターでした。
しかし、人物としては常におどけて、口がうまい、なんとも憎めないキャラクターでもあり、人気の脇役の一人でした。
ベター・コール・ソウルを見ると、この「ソウルの姿」は作られたものだということがわかります。
いや、作られたというか、人の別の一面とも言えるかもしれません。
中学時代の陰キャが、高校デビューで気取るように「どの自分の一面を出すか」を人は選択できますよね。
このベター・コール・ソウルという物語では、主人公ジミーが「ソウル」という仮面をつけることを選択します。
堂々と悪人と交渉し、金を儲けることを大切にし、目的のためなら手段を選ばない「ソウル」という人間を何故彼は選んだのか?
その答えがここにあるはずです。
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まだシーズン4で終わっていませんが、ブレイキング・バッドのときのソウルになることは確実。
オチがある種わかったまま見られますね
BETTER CALL SAULのタイトルの意味は?
Better Call Saul(ベター・コール・ソウル)とは「ソウルに電話しよう」という意味ですね。
主人公ジミーが後に名乗る名前「ソウル・グッドマン」。
彼は「ソウル」としてTVCMなどでPRをし、商売をしています。
ベター・コール・ソウルの感想(面白い3つのポイント)
ベター・コール・ソウルの感想です。
ブレイキング・バッドほど劇的ではないにせよ、地味に人間ドラマが面白いというタイプの作品です。
面白いポイントを3つにまとめて紹介してみます。
- 演出が凄い
- 手段を問わないソウルの危うさ
- ブレイキング・バッドファン必見の演出
ベター・コール・ソウル感想1:演出が凄い
ブレイキング・バッドとベター・コール・ソウルの監督・脚本は同じ人物。
※ヴィンス・ギリガン(Vince Gilligan)さん
ということで、演出方法が非常に似ています。
例えば
- モノクロな映像と、ちょっと古めな音楽をあわせた演出
- 「何かが起きた」ことをOPで見せて、その謎を解明するストーリーテリング
- 人間が仕方なく「悪の方向」にいざなわれていく展開
などなど。
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一番スゴい演出だと感じたのはシーズン4のエピソード7「馬鹿な真似」のオープニングですね。
スプレッドスクリーン(分割画面)を使っているんですが、これがとにかく神がかっている
「数ヶ月の変化」を音楽と映像だけに乗せて、二人の心が離れていく様が言葉無くともわかります。
映像自体も、左右の画面に別々に映る映像が「色使い、構図、アイテム」などが、それぞれ関係を持って映し出されていく。
アート的な演出そのものが良い(キレイ)というのもあるのですが
- 数ヶ月の時間の経過を退屈させずに見せる
- 徐々に心理が変化していく微妙なニュアンスを言葉を使わずに伝える
という点で持って、傑作すぎます。
※参考記事:冒頭のモンタージュシーンは服の色まで計算されている
あと、この色の演出もスゴイ。
こちらの記事にまとまっていますが、犯罪・危険に近づくと「赤色(暖色)」に近づく演出が巧み。
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ベター・コール・ソウル感想2:手段を問わないジミー(ソウル)の危うさ
ベター・コール・ソウルのポイントは、ジミーがソウルに変化するまでの話。
ジミーは一見良いやつなのですが、善と同じくらい「悪」も内包しているキャラクタだと思います。
ジミーは目的のためには手段を問わない
ジミーの一番の特徴は「目的のためには手段を問わない」という点だと思います。
目先の目標を達成するには、悪に手を染めてでも、犯罪を犯してでも、行動を遂行する。
それが彼の危うさですよね。
しかもその目的って割と短期的だと思うんですよ。
目先の利益だったり、目先の不満だったりと。
例えば、物語途中で解雇された法律事務所では、上の許可をとらずにTVCMを流していましたよね。
もちろん、組織の論理として、上の命令を聞いていないジミーは悪い。
しかしそれ以上に組織の目標「長期的に信頼を積み重ねる」よりも、短期的な目標「数字を手に入れる」という方を優先しています。
優先、というか、それしか見えていない気もします。
ジミーの天才的なプロデュースと営業能力
ジミーには天才的なプロデュース能力と営業能力がありますよね。
ふらっとTVCMを作ったり、人に何かを売ったりと、明らかに才能ありまくり。
自身の短期的な目標をやるための、手段を思いつける才能が常にある。
しかし、ある時まではそれが制限されていたと思うんです。
彼の中にある倫理・良心がそれを咎めた。
ジミーの回想であったように「親父が騙された姿」を見ていますしね。
ジミーの父を騙した人がいったように「この世は狼と羊しかいない、どちらを選ぶ?」と言われた時に、羊の方を選びたいジミーもそこにいたはず。
ついに「ソウル」という仮面をかぶる
で、彼の中にある2面性が行きつ戻りつし始めるのがシーズン3あたりから。
※以下、シーズン4までのネタバレあり
ジミーの中にある
- ジミー=羊(人を操れないが、良心的、倫理的)
- ソウル=狼(人を操り、傷つけることも目的のためにはいとわない)
という2つのどちらを選ぶのか?
彼は「ソウル」としての力の強さを知りつつも、それを避けていました。
しかし、シーズン4での兄チャックの死をきっかけに彼は、ソウルの方に大きくかじを切ります。
チャックの死の悲しみ、チャックへの復讐心、返されない弁護士資格という逆境。
様々なものが入り混じり、ソウルという仮面をかぶることを彼は選んだように思えます。
で、ココからは目的よりも、手段(ソウルらしくあること)というのが彼にとってのアイデンティティになる気がします。
「自身の弱い心、悲しみ」を隠すように、羊は狼の皮をかぶり、生きていくという予想です。
ベター・コール・ソウル感想3:ブレイキング・バッドファン必見の演出
ブレイキング・バッドのファン必見の演出が、各キャラクターの過去ですね。
「こんなキャラクタいたな!」っていう脇役から、ブレイキング・バッドの各シーズンの敵・ボスまで色々な人物が出ます。
事前に誰が出るかしらない状態で見たので「え!お前出るの!?」みたいな衝撃があること間違いなし。
いろんな人物がいるのですが何人かピックアップで。
まずはトゥコ。
ブレイキング・バッドでは、麻薬売人の元締めで、自身も使用していました。
ベター・コール・ソウルでは、まだ「話が通じる」感じでして、短期度もやや低め。
やはり薬物の影響で、従来の「攻撃的」な性格が強まったのだなあ、とわかります。
次にマイク。
超怖いガスの右腕だった彼は、ベター・コール・ソウルでは駐車場のスタッフでした。
フィラデルフィア元警官で「息子のマティが事件の中で殉職した。しかし犯人は同僚の警官だった」と判明。
そこで彼は、苦しみながらも復讐をした…という話。
スピンオフとして最高の出来ですね。
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で、ソウルとマイク、この2人が同じように地獄に足を突っ込んでいく姿が、ベター・コール・ソウルでのポイントです。
この二人の変化の物語とも言えるでしょう。
で、最後はグスタボ・”ガス”・フリング。
用意周到、用心深い彼が出てきたのはシーズン3でした。
ガスの若き日の姿が見られますし、ブレイキング・バッドに続く「メスづくりの場所」の話や、麻薬の流通ルートの話など、数年に渡り彼がどのように行動していたのかわかります。
どのキャラクターにも共通して言えるのが「バッドになりきる前」という点。
全体的に相手に情けを残したり、聞く耳を持ったりと、「悪の度合い」がやや低いよなーと思います。
もちろん各キャラクターとも「能力(素養)」はあるのですが、どちらかというと決心とか決意とかがまだ弱いですよね。
「残忍で冷酷な人間」になるのにはやはり過程があったのだな、ということが前日談を通じてわかります。
ちなみに、一番の疑問はブレイキング・バッドの世界には出ていない「キム」の行方です。
「ジミー(ソウル)とどうなったのか?」
というのはブレイキング・バッドを見て、彼女が出ていないと知るから楽しめる内容です。
ちなみに、ベター・コール・ソウルで出てきたキムの机が、ブレイキング・バッドではソウルの所持品として出ていることから「ジミーのキムへの思いは残っている」ことだけは確実です。
ベター・コール・ソウルとブレイキング・バッドはどっちから見るべき?見る方法は?
「ベター・コール・ソウル」と「ブレイキング・バッド」はどっちから見るべきか?
やっぱり「ブレイキング・バッド」から見たほうが楽しめると思いますw
ただ「ベター・コール・ソウル」は前日談なので、こちらを先に見てからでも面白さは担保されますけどね。
理想は
- ブレイキング・バッド
- ベター・コール・ソウル
- ブレイキング・バッド
という順番で、2回見ることかなw
※初回はお試しトライアルがあるので、無料です
DVDレンタルや、動画を買う方法もあります。
※「COMPLETE BOX」も売ってますね
まとめ:ベター・コール・ソウルのシーズン5以降の楽しみなところ
まとめ:ベター・コール・ソウルのシーズン5以降も楽しみです。
シーズン5で完結するという噂もありますが、はてさて。
主として
- ジミーが「ソウル」になって苦しむ姿
- キムとの行末(彼女はそもそも生きているのか)
- ジミーとマイクの話はクロスするのか
という点が楽しみ!
とにかく「ブレイキング・バッド」ファンは必見な作品ですよ!