あるアルパカの知恵

アラサー男の趣味ブログ。楽しい話と、役立つ話を提供します。

「あひるの空」の勝敗論

あひるの空は作者が創作の権利を勝ち取った面白い漫画だと思います。

 

あひるの空とはどんなバスケ漫画か

「あひるの空」は講談社「週刊少年マガジン」連載中のバスケ漫画です。

作者は、日向武史さん。連載デビュー作品「Howling」は全2巻でしたが、連載第2弾の「あひるの空」 は48巻まで刊行されています。

累計2400万部の売り上げで、マガジンの中でも長期連載&看板作品の1つです。

 

バスケ漫画的な特徴

「バスケ漫画」なのでもちろん、強い仲間が集まって、強敵たちと戦います。

  • 低身長ながらも超高精度の3Pシューターの主人公
  • センスが抜群の元不良の双子
  • 偶然入った天才フォワード
  • 高身長センター

純粋に、スポーツ漫画として少年心をくすぐります。

 

そしてもちろん、インターハイ(全国大会)を目指して戦います。

主人公は死別した肉親との約束を果たすためにインターハイを目指します。

天才フォワードは離れて暮らす妹とインターハイの場で会う約束をします。

それぞれのキャラに、強い動機があります。

 

しかし、物語も佳境の40巻あたりで意外な展開が待っています。

本当に色々と、「えっ」ということが多々あります。

 

作者が描きたいのは青春と心理

この漫画で作者が描きたいものは、登場人物の心情、細やかな人間関係でしょう

 

高校生特有のクローズドな環境での仲違い、関係の修復。

期待と異なる自身の才能の限界、決して追いつけない現実。その克服。

どうしようもない家庭環境という残酷な事実と、個々人の向き合い方。葛藤。

 

勝った負けたがどうしたとか、すごい才能で手に汗握る展開ではない。

そんな記号的な情報はどうでもよい。

多くの少年漫画たちがすでにその道は開拓しているから。

 

ある一つのものにかける人々がいる時に、必然的に紡ぎ出される内面の声

元来、多くの創作では、無視されてきたその「気持ち」をあひるの空では、優しく描いています。

 

押井守の勝敗論から学ぶ「創作者の勝敗」

話変わりまして、映画監督の押井守さんの著書で「創作者(映画監督)にとっての勝敗」についてこのように語っています。

自分にとっての”戦いに勝つ”ということの本質、

それを理解することが一番大事なんだよ。

じゃないとその場限りの勝った負けたで一喜一憂して、

世間的な価値の尺度に振り回されて、消耗するだけです、永遠に。

それは自分にとっての本当の勝利、本当の成功からは遠くなるだけです。

 

また、興行的に成功したか(売り上げが大きかったか)や、賞をとったかよりも大事なことがあるとも言っています。

映画監督の勝利条件ってなんだっていつも言ってるけど、

…次回作を撮る権利を留保することなんだよ

少し補足すると「自分のやりたいことを、次回もできること」が大事だと言っています。

学生の頃はよくわかりませんでしたが、サラリーマンになり、つまらない仕事が増えてきた昨今、「権利を留保する」という表現は妙に腑に落ちます。

 

あひるの空は勝利条件を満たし続けている

その「押井守」の文脈に沿って考えれば、「あひるの空」は勝利条件を満たしている凄い作品だと思います。

少年漫画(しかもマガジンという大メディア)という場で、自分のやりたいことを、やり続けている。

連載という権利を留保し続けています。

 

無理やりな勝利や、読者受けを意識した必殺技などに縛られる必要はありません。

そして最近の連載ではついに、この物語のクライマックスであろう対戦まで漕ぎ着きました。

1ファンとして大変嬉しいとともに、マガジンでこの内容を発表し続けられた(売り上げも伴って)のは凄いと思います。

そしてここへきて、2度断った上で、ついにアニメ化ですからね。期待が膨らみます。

※「あひるの空」の単行本で作者がこんな感じのことを言っていました

以前もアニメ化の話があった。

「低身長の主人公がNBAに行って活躍するのはどうですか」

と言われて、この作品をまだわかってもらえないとショックだった

 

 

おわりに

あひるの空はこんな方にお薦めです。

  • バスケット漫画が好きな方
  • 心情を描く漫画が好きな方
  • 詩的な表現が好きな方
あひるの空(1)

あひるの空(1)